39 ガスパチョ始めました。

こんにちは。料理人の佳子です。
飲食店で、この時期によく貼り出されるのが「冷麺はじめました」というポスター。そろそろ夏になってきたなと自覚できる風物詩です。

首都圏在住の知人にそれを伝えると、「冷麺じゃなくて、冷やし中華でしょ」。関東で冷麺という言葉は、盛岡冷麺、韓国冷麺のそれに匹敵し、冷やし中華には使わない、と力説するのです。

関西で冷麺という言葉が一般的なのは、冷やし中華が普及した時期に、中華料理店で「冷麺」という商品名で売り出した名残りだとか。
冷やし中華でも冷麺でも、頭に浮かぶのは、あの冷たくて甘酸っぱい味つけ。焼肉屋さんなどで提供される朝鮮半島由来の冷麺を指す時には、韓国式冷麺といいます。
街中華や近所のうどん屋さん、食堂が扱っている冷麺は、韓国式ではなく日本式。いちいち冷やし中華と言い換えなくても通じる実質本意の上方の言葉です。

気温や湿度が上がる季節になると、冷たくて、つるつると喉に入り、少し酸っぱい味が食欲を進ませますね。さらに夏が進んで体が疲れてくると、ビタミン類を欲します。
そのどちらにもかなっているのが、野菜の冷製スープ「ガスパチョ」。
今年も食堂あおぞらで「ガスパチョはじめました」。

ガスパチョは、スペイン・アンダルシアの名物料理です。ポルトガルでも食べられるそうです。日本では、特にアンダルシア料理専門店でなくても、夏になるとスペインバルで登場する一般的な夏の料理です。
スペインの南部、アンダルシアは、フラメンコの里として知られますが、夏には40度以上にもなる厳しい暑さで知られます。最近では日本の夏も、それに匹敵するほどの酷暑になりつつありますね。
今年も梅雨があけた後にどんな夏が待っているのか。想像しただけでも「暑っつ!」と思います。

ガスパチョの具材は、よく熟れたトマト、甘みの強いパプリカ、皮を剥いた瑞々しいきゅうり、フランスパンの白い部分などです。フランスパンを入れるのは、スープにとろみを出すためです。
たまねぎとにんにく、白ワインビネガー、塩をミキサーにかけ、オリーブオイルを少しずつ入れながら乳化させた後、すべての材料をいれて混ぜます。
シノワで濾して種や皮を取り除き、最後に少しばかりの「ある柑橘」を投入します。一晩冷蔵庫で寝かせた方が酸味の角がとれて、まろやかな味になります。

夏の料理としてガスパチョが向いているのは、冷たくて飲みやすく、野菜にビタミン類が多くて美味しいから。そして、ビネガーに含まれるアミノ酸とクエン酸が疲労回復に効くからです。
白ワインビネガーは米酢などに比べて糖質が少なく、カロリーも低いことから、ヘルシーなお酢といえます。
日本の冷麺(冷やし中華)もスペイン生まれのガスパチョも、夏によく食べられるのは、理にかなっているからなんですね。

最後に入れる柑橘は、特別なものではありません。大阪のスペインバルでいただいたガスパチョがおいしかったので、何が入ってるの?と尋ねて教えてもらいました。
私は、スペイン産のソレを使っています。何が味付けの最後か、来店された時にお尋ねください。

6月中旬にガスパチョを始め、少なくとも9月中旬までは続ける予定です。「暑っつ!」と思ったら、「ばててきた!」と思ったら、あおぞらでガスパチョをどうぞ。

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