
こんにちは。料理人の佳子です。
昨年の夏は、猛暑でしたが、今年の冬は極寒ですね。
厨房で換気扇を使うと、吸気口から外気を吸い、厨房内を冷たい空気が横切るため、外と同じぐらい寒くなります。でも、ガスを使う限り、換気扇を使わないわけにはいきません。
私は、背中に使い捨てカイロを貼り、ボトムの上に防寒用のラップスカートをはき、心に喝!を入れて寒さに耐えています。
みなさまどうぞ、オーブン料理や揚げ物料理をお頼みください、私の寒さが少し和らぎます(笑。
よく祖母が「奈良のお水取りが済むまでは寒いのよ」と言っていました。奈良のお水取りは3月の最初の2週間ほどに行われます。
今年の立春は例年より1日早い2月3日でした。2月には途中で寒さが和らぐ日があったり、梅の花が咲き出したりして、あら春がそこまで?と思いがちですが、やっぱり3月の半ばを待たないと、本格的に暖かくなりません。
奈良のお水取りが済むまでは…というのは、先人たちが連綿と伝えてきた知恵なんですね。
先日の定休日に、あおぞらで集めているペットボトルのキャップをリサイクルしてもらうため、北摂のプラスチックメーカーに出向きました。そのついでに、御堂筋線の新しい駅ができた箕面萱野エリアへも足を伸ばしてみました。
J A大阪北部の直売店があったので立ち寄ってみたところ、珍しい食材に出会いました。一つが「日野菜」。日野菜は滋賀県の伝統野菜というイメージがありますよね。
太陽光が当たった部位に赤い色素を生合成する性質をもったカブの品種の1つで、滋賀県の日野町が原産地と言われているために、この名で呼ばれます。
滋賀県由来の野菜だけれど、箕面市の農家さんが作っていたので珍しいなと思って仕入れてみました。
蕪の部分と葉の部分を下処理した後、一晩甘酢で漬けて、試しに出してみたところ、おいしいとお客さまからご好評。少しの間ですが、「選べるおつきだし」の一つとして提供しますので、ぜひご試食ください。
もう一つ、その直売店で見つけたのが「秋鹿の酒粕」です。昨年末にあっという間に売り切れてしまった粕汁は、実は京都の「松竹梅の酒粕」を使っていました。
秋鹿はご存じの通り、大阪・能勢産の名酒。J A大阪北部の管轄には、能勢町がありますから、仕入れ先の一つのようです。
大阪市内では、秋鹿の純米酒粕は見たことがなかったので、仕入れてきました。
粕汁は、母校の辻調(辻調理師専門学校)の授業でも学んだ料理でした。
その時、日本料理の教授から「酒粕は、大吟醸などのよいお酒を使ってはだめですよ。スーパーで売っているのでいいから、純米の酒粕を使いなさい。その方がおいしく仕上がります」と教えられました。
松竹梅の酒粕は、スーパーで仕入れたものではありませんが、大吟醸の酒粕ではありません。酒米を削って削って、研ぎ澄ませるように酒を仕上げる大吟醸酒や吟醸酒は、飲むのにはおいしいけれど、醸造用アルコールを添加していたり米本来の味わいや雑味を減らしている分、粕汁としての旨みが軽くなるのかもしれません。
松竹梅と秋鹿は産地が違い、水や米も違いますから、風味もどことなく異なります。初めて試してみた秋鹿の粕は、出汁とのマッチングが非常によく、おいしい粕汁に仕上がりました。
奈良のお水取りまでには売りきれてしまうかもしれませんが、せめて2月いっぱいは、何とか粕汁を続けたいと思っていますので、こちらもお試しください。
粕汁は、赤い塗りのお椀でお出します。紅白の組み合わせがよく映えます。
そして、大阪・堺発祥の赤い柚子胡椒「ゆずからりん」を添えていますので、お好みでお使いください。高知県三原村産青柚子の皮と唐辛子を混ぜ合わせ、しっとりとフレーク状にした柚子胡椒です。見た目は真っ赤ですが、あまり辛くはなく、柚子の香りが高く、粕汁ともよく合います。