こんにちは。料理人の佳子です。秋の空なのに、本日は35度の猛暑日なんだそうですよ。みなさん、熱中症にお気をつけてくださいね。
さて、わが街、昭和町周辺には、「バイローカル」という機運があります。
「地域の商いを生活者が知り、それらのお店を積極的に継続的に使うことで、良い商いが残り育ち、新たに良き商いが発芽し、そのことで地域がより魅力的になる。結果そこで暮らす人の生活の質を高め、そして多くの人が住みたいと思うまちとなり、地域の資産価値を向上させる取り組み」と、規定しています。
https://buylocal.jp/
地域を活性化するためには、打ち上げ花火的なイベントをするより、そういう地道な日々の活動が強力なのかもしれません。が、それを継続するには、並大抵ではない粘り強さと、多様な人を新たに巻き込めるだけの「地域の度量」のようなものがいると思います。
食堂あおぞぞらも昨年の11月に、この地域の渦の中に入れていただきました。
私が店舗物件を探していたのは、コロナ禍が始まったばかりのころで、いろいろな事情から市場に出てくる物件はとても少なかった。だから、市内のあちこちで空き物件を探し、昭和町に辿り着くまで1年かかりました。
昭和町でも空き物件はあっても、貸し出し可能の物件や飲食店可能の物件は少なかった時期でした。
それから2年。最近、周囲にポツポツと新しいお店が増えてきました。
カフェやベーカリー、おにぎり屋、アイスクリーム店、さまざまな飲食店、シェアキッチン、八百屋、クリニック、整体サロンなど、新しい店舗や業態が新鮮な風を吹かせています。
昭和町を含む阿倍野エリアは古い街区なので、空き家や空き店舗は元々少なくなかったのですが、それらを活用する取り組みが、コロナ禍を経てあちこちで動くようになってきました。
一方で、昔ながらのお店は今も地域に根付き、安心や潤い、なじみのある風景を醸し出しています。
あおぞらのお客さまで、昭和町に暮らす78歳のSさん。酷暑の中、突然、エアコンが壊れたので、家電チェーン店に行ってみると、品薄で入荷は2週間先。それまで暑い部屋に暮らすことはできないと、昔からある近所の電化店を訪ねました。
古い型でもいいから1日も早くと伝えると、すぐさま入荷され、3日で自宅は涼しくなったとのこと。
「ちょっと高くても、助かったわ」と笑っておられました。この方、お花、精肉、鮮魚など、必ず近隣の古いお店で買うようにしているそうですよ。
古くからの店が踏ん張ってくれている一方で、店主の高齢化なのか、採算性重視のゆえか、閉店する店も。この半年では、古くからある蕎麦屋さんやちゃんこ料理店が閉業しました。
日々の仕入れは、なるべく近隣、広く考えて阿倍野エリアで調達することにしています。
他所に出ないと手にはいらないもの、具体的には、塩麹や醤油麹をつくるための「生麹」、エキゾチックな料理を作る時に必要なレモングラスやココナッツシュガー、キノコ風味の中国醤油、使ってみたことのない「アジアの調味料」は中央区の黒門商店街界隈や空堀商店街界隈に買い出しに出かけます。
時々、北区の天満市場や浪速区の木津市場ものぞきます。
この激しい物価高の中、安く調達することは大切ですが、よい品を見つけること、それがよい形で循環することを念頭に入れています。
地域に根ざす商いは、地域の価値を向上させる存在であるという信念が、バイローカルムーブメントの根源にありますが、具体的にあおぞらがそれにどう取り組んでいけばいいのか、日々、手探りです。
創業のスピリッツ通り、この小さな店が、お客さまと私たちの快適な居場所であること、その居場所が明日の活力を醸成することが目標なのですが、理想と現実は、かくも乖離するものかと毎日痛感します。
私たちの努力不足のゆえか、お客様の来店数が伸びません。
そんな中で、コツコツ足を運んでいただく常連さんは、本当に心強い存在です。ありがとうございます。
どなたかが予約を入れてくださって来店される。すると、それが呼び水となるのか、新しいお客様が扉を開けてくださる。そんな好循環を感じる日もあります。
「一度来てみたかったんですよ」。
昨日も大学での研究職を退官されたばかりの地域のお客様ご夫妻が、初めて来てくださいました。
あおぞらが建設中のころから注目されていたそうですが、初来店はオープンしてから10か月後か…。
ウレシクも、キビシイ商売だなあと思います。
この厳しい市況の中、なんとか持ちこたえていきたいと思いますので、これをお読みのお客様、そして未来のお客様、どうぞあおぞらの扉を開けてください。
あなたの居場所をご用意して、お待ちしています。