料理を美味くするのが醸造酒、つまみで旨くなるのが蒸留酒。佳肴良酒がよかタイ
”江戸時代から「食中酒」として人気を博していた「灘のお酒」。(料理とお酒の)ペアリングで至福の時間をお楽しみください”が営業方針の神戸市灘区御影にある「灘五郷酒処」。”旨味と香り”の「食堂あおぞら」とコンセプトが似ているので気になっていた。
先日の日曜日、一人で行ってみた。開店の12時から、今津郷、御影郷、魚崎郷、西郷、西宮郷の5つで灘五郷(写真の枡でご確認を)となるとか、奇跡の水(なんで「奇跡」って言われるのかは、まあ置いとこう)と言われる宮水、ミネラル豊富(硬水)な仕込み水を使っているので灘の酒は力強くぐっと味わい深いなどの説明を受けた。
ご解説はもういいから、早く席に案内してよと気が急く。5,6分も待っただろうか、ようやく案内された。コの字カウンターの左一番奥。やっぱり苦手の立ち席だ。お酒は落ち着いて呑みたいし、古希近くの躰にゃちとしんどい。
ちなみに、なにわの船場の立ち飲み屋で、「300円出すから椅子をくれ」といって顰蹙買ったのは5年ほど前だったかな。まあそんなことはどうでもいい。
前もって予約しておいた「灘五郷酒処セット」が写真のように提供されてきた。料理は手前右から、秋茗荷と牛蒡と人参の金胡麻酢漬、真ん中が紅葉鯛の生姜麹漬焼とキノコのオイルコンフィー、左が元気鶏と南瓜とさつまいものこっくり煮。厳選した旬の素材を巧みな料理法で仕上げたものなのだろう。ごめん、勉強不足の昭和のおっさんには夏と秋の茗荷の区別がつかない。紅葉鯛の味わいと色合いがわからない。元気鶏って知らんかった。
並んだ日本酒は、全部特定名称酒だ。右から大関、福寿、千代田蔵、沢の鶴、白鹿。福寿だけが純米酒でほかは本醸造酒。白鹿は本醸造酒で生酛造り。ちょっと説明すると、本醸造酒とは純米系の醸造で最後に酒母の発酵を止めるために醸造アルコールが加えられ(戦後すぐに作られていた悪質なアル添の酒とは全く違う)ていて、すっきりキリリとした味わいになるとされている。
食堂あおぞらで提供している日本酒はすべて純米酒系(純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒)だけど、先月京都の某店で飲んだ本醸造酒の冷酒が殊のほか京料理の味付けにフィットして美味かったので、店にも置いてみようかなと思っていたところだ。
さて、「灘五郷酒処」のお薦めの料理と酒のペアリングで、昭和のおっさんに馴染んだのは元気鶏のこっくり煮と白鹿本醸造生酛造り。なぜかな?
見つけた答えが、こっくり煮以外は写真でわかるようにいわゆる「濃い口」じゃない。ミネラル分豊富な宮水で醸した力強くぐっと味わい深いの灘の酒にはしっくりこないってことじゃないだろうか、、、そうだとは言い切れない自信のなさあり、、、
灘の酒は、江戸に下って東(アズマ)の濃口にフィットしたから人気を博した。あるいは灘の酒に合うように東の料理が濃口醤油を導いたのかもしれない。京料理の薄口旨口とはなじまなかったということじゃないだろうか。機会があれば、軟水で有名な伏見や広島の酒で料理とのペアリングを試してみよう。
突然ですが、鯛の頭(カシラ)のあら炊きは、関東風の甘辛くベットリとした煮付けよりも、薄口でお出汁に浸る関西風の方が昭和のおっさんの好みです。
「セット」だけじゃ小1時間で終わってしまい、物足りなかったので、チケット追加で買って、自分なりのペアリングで料理とお酒を注文してみた。「剣菱のこうじで漬けた若鶏の唐揚げ」と「特撰黒松剣菱」は剣菱ペアで、「揚げたてポテトチップス・パルミジャーノ付」と「特撰菊正宗生酛辛口」は乳酸香る生酛とチーズのペア。まあまあの相性、お酒をケチびって特定名称酒にせず普通酒にしたことに反省しかりでした。
独りよがりな言い分:灘の酒は東の味付けにベターなペアリングかな
食堂あおぞらは、
佳子が料理(肴)を作る、昭和のおっさんの良夫が酒を注ぐ
ふたりで、佳(子)肴良(夫)酒 なんちゃって