こんにちは。料理人の佳子です。
梅雨が明け、本格的な酷暑が始まりました。夏バテしないよう、健やかにまいりましょうね。
小さな店のささやかなSDGs第三弾は、「フェアトレード」です。
フェアトレードとは、「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみ」と、特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのHPに書いてあります。
食堂あおぞらは、できる範囲でフードマイレージ(*)の実践を心がけていますが、食材のすべてをフェアトレード商品で賄っているわけではありません。
どちらかというとフェアトレードにおける「立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す」という点に共鳴し、その価値観を共有したいと思っています。
*Food Miles(食料の量×輸送距離)を意識し、 なるべく地域内で生産された食料を消費することにより環境負荷を低減させること。
本来、調理に携わる者は時計やアクセサリーをつけてはいけないのですが、私も良夫マスターも禁を破って(笑)、帽子や胸元にブローチをつけています。
私の帽子についているブローチをご覧になって、「あ、かわいい!それ何ですか?」とおっしゃるお客様に、「これ、プルタブでできているんですよ。ほら、清涼飲料水の開け口、の」というと、みなさん目を丸くされます。
このスタイリッシュなブローチは、リサイクルしたプルタブを丁寧に処理して作られています。
作り手は、ブラジルの首都、ブラジリアに近い貧困地域の女性たちで、このしごとが地域のコミュニティーづくりにも貢献しています。
日本では、フェアトレード企業の第一人者、Love&senseさん(株式会社福市)が扱っています。
興味のある方は、下記のサイトをご覧になるか、大阪の阪急百貨店10階の直営店にいらしてくださいね。
https://www.love-sense.jp
良夫マスターや私が胸元につけているハートのブローチやドリンクの底に敷くコースターも、同じく福市さんが2011年に手がけた「EAST LOOP」の商品です。
東日本大震災で大きな被害を受けた東北の女性たちに、編み物という手仕事を通して復興してもらおうと、福市さんは生業の機会をつくりました。
この発想がすばらしいと思いませんか。
単に一時的な寄付金を送るのではなく、未来につなぐ「しごと」を作って継続的に支援する。まさにサスティナブルの本質です。
東北のお母さんたちがコツコツ手を動かして商品を仕上げ、商品代金の半額が生産者のお母さんグループの収入となり、復興の一助となりました。
(2014年、株式会社福市からNPO法人遠野山・里・暮らしネットワークを経て、新たに設立された『合同会社東北クロッシェ村』に移管)。
プルタブも、手編みのコースターも、どちらもがフェアトレードであるとともに、女性の経済的自立につながる仕事として成立している。この点が食堂あおぞらが、店で使おうと決めた理由の一つです。
あおぞらは、お客様のお腹をいっぱいにするだけでなく、明日も元気よく暮らしていこうと思える活力も持ち帰っていただきたいと創業しました。
そして、女性たちがいきいきと働ける社会づくりを応援したい、その一助になれば、と思って店づくりをしています。
福市を率いる高津玉枝社長は、20代からの友人ですが、今回、このブログのために改めてインタビューの時間を作ってくださいました。
「フェアトレードに至るまでの歴史を遡り、コストを抑えるために劣悪な労働環境で安価な労働力として搾取されてきた人の犠牲の上に、私たちの生活がある、そんな目と耳を塞ぎたくなるような事実も、知識として知っておかないといけないと思います」
「フェアトレードは、そんな不公正なことのない企業から買う、という運動の一つ。また、仕事を得るには効率の悪い地域に住んでいることで貧困に喘いでいる少数民族に、ビジネスを起こすプロジェクトも手がけてきました」
だからといって「かわいそうだから助けてあげようとか、義務感でお金を出すのではないんですよ」と高津さん。
「フェアトレードの買い物をして嬉しかった、応援できて楽しかったと思ってもらえるような魅力的な商品でないといけない。そんな買い物の選択肢を増やすことが、私たちのミッションなのです」と高津さん。
そんな取り組みに共鳴して、魅力的な商品を買う。
それを見た人から「かわいい!それ何ですか?どこで売っているんですか?」と聞かれたら、在処や背景をお伝えする。
その「ループ」が大事だと私は思っています。
飲食店はある意味、「仲介の場」です。
健康や栄養の仲介、体のリラックスや気持ちのデトックスの仲介、素敵な情報の仲介…。
誰かに言われたからではなく自発的に、そして普通に、フェアトレードの買い物をしたり、女性の経済的自立につながる応援ができればうれしいな、と私は思っています。
SDGsという大きな社会のうねりと、あおぞらのような小さな飲食店が歩調を合わせることは容易くないのですが、店主が好ましいと思っている価値観をお客様と少しでも共有できたら、と思います。