42 スープを想い、スープに迷う。

新年おめでとうございます。料理人の佳子です。
旧年中はたくさんのお客様にお越しいただき、ありがとうございました。
本年も、お腹と心をあたため、ゆったり過ごしていただける食堂あおぞらづくりに努めてまいります。
今年もどうぞよろしくお願いします。

初詣は恒例の松尾大社(まつのおたいしゃ)に行ってきました。
松尾大社は、古代の秦氏にまつわる古いお社で、お酒の神様として全国の蔵元の信仰を集めています。だから奉納される四斗樽の御神酒が、それはそれは美味しい(←いただけるんですよ)。

まず、杉の香りがすばらしい1合枡を1200円で購入します。樽酒の前に並ぶと、きっちり1合なみなみと注いでいただけます。
コロナ禍の際には、境内でいただくのが中止になったり、おかわりが中止になっていたのですが、とうとう今年からコロナ前と同じように、枡での御神酒がその場でいただけ、のんべい念願の「御神酒のおかわり」(おかわり代は200円)ができるようになりました。

氏子たちやお酒を愛する人たち、大切に思う人たちで大賑わいに。
特に今年の京都は暖かかったので、焚き火にあたっていなくても大丈夫なほどでした。
初詣ってたいてい「今年も家族一同、健康で暮らせますように」とか、「さらに商売繁盛ができますように」とかお祈りするのではないでしょうか。
でも、今年は、「争いのない、病気のない、災害のない、事故のない、復旧の早い年であれ」と、そればかり願ってきました。きっとどなたにとっても、そうだったのではないでしょうか。祈らずにはいられない毎日ですもの。

昨年の11月、食堂あおぞらは開業3年を迎え、目下4年目街道を爆進中です。
良夫マスターは今年6回目の年男、私は前期高齢者入りする年齢となり、健康とのバランスを保ちながら働き方や処し方を見直しつつ、一番大切なのは初心に戻ることと痛感します。

あおぞらのお料理のコンセプトは「うまみと香り」。
この初心に戻るべく、昨年からはじめたのが「週替わり 今週のスープ」という企画です。
レストランでコースを頼むと、スープはたいてい最初の方に出てきますが、あおぞらのようにアラカルトが中心の小さな店では、「ごはんとお味噌汁と糠漬けね」というように、最後に頼む方が多いように思います。

それをあえて、「スープは飲むもの?食べるもの!」と見直し、できるだけ最初の方に召し上がっていただきたいと思っています。
寒い外や暑い外から飛び込んでこられたお客様の胃袋を、まず暖かくしたりクールダウンしたりする力をスープはもっていますし、うまみと香りを発揮しやすいお料理でもあります。
お酒を召し上がる方にとっては、滋養があり、脂っこくもないスープをまず胃袋に入れていただくのは、理にかなっているようにも思います。

原則、週替わりですが、あおぞらの定休日(火曜、水曜、祝日)のため1週は4、5日しかありません。食材の手配が長期間はできないこともあります。1週で終わる場合も2週連続で同じスープをお出しすることもあります。
これまでにお出ししたのが、
「台湾母さんの味 鶏とれんこんの薬膳スープ」
「トマトと長芋の紅白スープ」
「大福豆(おおふくまめ)とたっぷり野菜のスープ」
「あつあつ粕汁」

それぞれ個性があるのですが、トマトと長芋の紅白スープは、好評だったため定番料理にしました。
旨味はトマトに含まれるグルタミン酸、トマトの紅とすり流しの長芋の白のコントラスト、とろみは長芋とお椀の底に沈めた三陸産のふのり、香りはごま油が醸し出します。
嫌味のない、やわらなかな香ばしさを…と探した結果、ごま油は京都の山田精油さんにたどりつきました。
通年メニューにしましたので一度ご賞味ください。

目下、今週のスープの中でダントツ人気は粕汁です。まさに冬のスープの王様!
11月に入手した松竹梅さんの新しい酒粕を消費するのに、前年は確か1月末ごろまでかかったと思うのですが、今回は年内に売り切ってしまいました。
「冷麺はじめました」が夏の訪れを示すとしたら、「粕汁はじめました」は冬への備えの食材。
今年はちょっと寒いので、備えをしっかりされた方が多いのかな。

寒さはこれからが本番です。新年は「蕪ときのこの豆乳スープ」をお出ししましたが、別の酒粕を仕入れて粕汁を再開するかどうかは、ちょっと迷っているところです。
ともあれ、「週替わり 今週のスープ」をお試しくださいね。

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